こんにちは、ベレクト運営事務局です。
北海道大学の獣医学生が授業で勉強している内容について教えてもらいました。
北海道大学獣医学部受験をお考えの学生、興味のある学生・保護者さまの志望校選びの参考になれば幸いです。
※2024年度時点でのカリキュラムです
本文は獣医学生が書いた文章をそのまま掲載しております
北大獣医2年生の授業を覗いてみよう
皆さんこんにちは。
獣医学部の授業と聞いて皆さんは何を想像しますか?
ウシ🐮がいるのかな イヌ🐶と触れ合うのかな 白衣着て実験するのかな、、、
などなどでしょうか?
私は高校生の時はほとんど知らずに受験勉強していました((-_-;)
今回は北大獣医学部の2年生の授業の様子を少し覗いてみましょう。
本記事では前期の授業についてご紹介します。
授業内容
北大は1年生の間は他の学部と一緒に一般教養の授業を受けています。(ドイツ語とか数学とか)
したがって専門科目がスタートするのは2年生の前期からです。
受験も終わり1年生の間は息抜きしていましたが2年生の春からはやっと獣医らしくなります。
1学年40人しかいないので基本的にずっと一緒に授業を受けています。
解剖学(講義・実習)
2年生に進級したらまずは解剖学の授業です。
解剖学では動物の骨や筋肉、内臓、血管、神経の構造や名前をひたすら覚えます。
獣医学部の解剖が医学部と異なる点は色々な種類の動物について覚えないといけないところです。
講義に加えて実習も行われ、標本を使う授業と実際に解剖をする授業があります。
北大ではニワトリ、ウマ、ブタ、ウシ、ヤギ、イヌを解剖し、講義で習った内容の理解を深めます。
座学だけではイメージがつきにくかったことも、実物を見ることで定着させることができます。
小噺1 おそろいのつなぎ
実習では学年でおそろいのつなぎを着用します。
背中のイラストは生徒のデザインです。
なんと北大で教鞭を取られている先生方が学生だった頃からつなぎは学年でおそろいにしているそうです。
小噺2 期末試験
北大の解剖学の期末試験は筆記試験ではありません。
ではどうやって試験をするのか?
口頭試問形式で試験を行います。試験は先生と1対1です。
試験前は仲間と学部にこもってホワイトボードに図を描いて互いに説明する練習をしました。
生理学
生理学では細胞の基本的な構造に始まり、泌尿器・循環器についてや内分泌系、神経生理や消化生理、さらに環境生理について触れます。
言葉が難しくなりましたが、
生体がどのように機能しているのかについてのメカニズムを習います。
たとえば解剖学では腎臓の構造について学びましたが、生理学ではその腎臓でどのようなことが起きてるのか、どのような機構があるのかについて学びます。
腎臓の他にも
心臓、肺、神経(自律神経や運動神経・知覚神経 さらには脳も)、
消化器官(胃とか腸とか)、内分泌器官(ホルモンを産生する器官です 甲状腺とか)について扱います。
環境生理では睡眠やホメオスタシス(恒常性)、体温調節、概日リズムについて習います。
今後より専門的なことを学ぶにあたって基礎となる重要な科目です。
小噺3
獣医学部には高校で生物を選択した人もいれば物理を選択した人もいます。
物理を選択した人に配慮しているとはいえ 物理選択の中には戸惑う人もいます。
とはいえ生理学は生物選択であってもなかなか苦労します。(;’∀’)
生化学(講義・実習)
生化学では代謝経路にフォーカスをおいて学習します。
たとえば、
高校生物でおなじみの解糖系、クエン酸回路、電子伝達系(呼吸の代謝経路のことです)について今まで以上に細かく扱います。
高校では糖(炭水化物)の代謝についての学習が主でしたが、脂質の代謝やアミノ酸の代謝なども。
また酵素そのものについても高校以上に細かく習います。
中には一部生理学で習ったこととリンクしていて科目のつながりを感じます。
また生化学の実習は学部に入って最初に行う実験です。(白衣着てやります。)
最初は実験器具の使い方や基本的な手技について先生やTA(院生の方)さんから習います。
実験では酵素の反応速度を計算したり、代謝産物の抽出を行ったり、タンパク質を泳動させたり。
講義で理論は習いますがいざ自分たちの実験結果をまとめるとなると綺麗にいかないことが多く、
正確に実験を行う難しさを感じます。
小噺4
脂質代謝は大学生になって初めて出会う内容です。
少しだけですが痩せ薬のメカニズムがわかるようになりました。
何事も知識が大切だと思った次第です。
分子遺伝情報科学
分子遺伝情報では分子レベルでDNAやRNAの構造、転写・翻訳・複製のメカニズムを学びます。
簡単に説明すると、
細胞が分裂する時には自分のDNAを複製する必要があります。
また生物のDNA上にある遺伝情報をタンパク質として発現させるには様々な仕組みが関与しています。(そのプロセスが転写と翻訳です。)
高校の生物では大枠について学習しますが、大学ではもう少しミクロな視点(分子レベル)で何が起きているのかがミソです。
メカニズムの他にそれらの機構に異常が生じた時どのようなことが起こるのか、何が原因で異常が生じるのかについてにも触れます。
バイオテクノロジーという言葉をご存じの方も多いと思いますが、組み換え技術や遺伝配列を調べるための最新の技術(知識)なども扱います。
小噺5
最初なので用語が聞きなれないものが多いです。
真核生物のプロモーターの基本構造にCAAT boxというものがあるのですが
最初聞いた時に猫がのびているのかなと教科書を二度見しました。
個人的に可愛い名前だなと思っています。
獣医倫理 動物福祉
これまでご紹介した生理学や遺伝学、解剖学などはどちらかといえばハードスキルですが、
獣医師としてどのような倫理観を持つべきなのか、動物福祉に配慮するとは具体的にどのようなことなのか
といったソフトスキルも非常に重要です。
授業では動物福祉の歴史や各国における法律、動物が置かれている現状について学びます。
他にも盲導犬・介助犬についてやペットロス、多頭飼育崩壊など。
さらに外部講師の方からペットのシェルターについてのお話も伺いました。
小噺6
獣医に関係する法律は沢山ありますが、
医学だとおおかたが厚生労働省管轄なのに対して獣医は管轄がバラバラしています。
厚生労働省だったり環境省だったり農林水産省だったり文部科学省だったり、、、。
草地飼料学
草地飼料学では名前の通り「草」と「飼料」について学びます。
草の種類やその栄養価、サイレージの作り方、飼料の自給率についてなどです。
たとえば、、
実はウシとウマで好む草丈が異なります。
ウシは上顎の切歯と犬歯(手前らへんの歯のこと)を欠くので噛みとることができず、
草丈が短いと上手く食べることができないそうです。
もう一つ。
ウシの飼料といえば牧草をイメージされる方が多いと思います。
でも地域によってはトウモロコシの栽培が盛んなところもあります。
高校生物でC3植物とC4植物について習った方もいるのではないでしょうか。
小噺7
時間割で初めて草地飼料学を見た時は獣医は草についても勉強するのかと驚きました。
牧場に行ったときも単に「ああ草だ」ではなくこれは何だろうと気になるようになりました。
共同獣医学課程
北大獣医学部は帯広畜産大学と共同獣医学課程になっています。
共同獣医学課程とは双方の大学の先生が両方の大学の生徒に授業を行うものです。
科目によっては各大学ごとにやるものもあります。
相互に行う授業の場合はzoomやwebexで自宅や空き教室で授業を受けています。
対面が好きかオンラインが好きかは人によりますね。
まとめ
今回は北大獣医の2年生前期の授業についてご紹介しました。
獣医師は小動物臨床だけでなく様々な分野で活躍していますが、本当に幅広い知識が必要なのだと授業を受けていて感じる今日この頃です。
今回ご紹介したのはほんの一部ですが少しでも獣医学部の勉強のイメージを持っていただけたら嬉しいです。