【北大獣医】3年生が授業で勉強している内容は?現役生が紹介(2025年度カリキュラム-前期-)

こんにちは、獣医専門オンライン予備校のベレクトです。

以前北大獣医2年生の授業について前期・後期と2つの記事でご紹介しました。

今回は3年生前期の授業について講義、実習、現地実習に分けてご紹介します。

北大生

2か月間の長い春休みを終えて3年生になったと実感が湧かない中、授業は容赦なく平常運転でスタートします。4月の北海道はまだ冬です。

※2025年度の情報です

本文は獣医学生が書いた文章をそのまま掲載しております

講義

微生物学Ⅱ

微生物学Ⅱでは細菌の性状や生化学的な分類をひたすら暗記します。性状とは例えば「この菌は運動性があるか」といったもの、生化学的分類とは例えば「この菌は○○陽性であるか」といった感じです。

大腸菌やサルモネラ菌、結核菌、ピロリ菌など聞きなじみのある細菌も登場します。ちなみに獣医学ではこれらの和名ではなくEscherichia coliなどの学名を覚えなければいけません。国家試験はマーク式ですが学校の試験は記述式なので英単語を覚えるように細菌名のスペルを頭に入れます。

高校で生物の分類の「界門綱目科属種」を習いますが細菌でもこの考え方は大事で特に科・属は細菌の性質を判断する上で重要な枠組みとなります。と言ってもやたらと例外が多いのですが、、、。

寄生虫・寄生虫病学

寄生虫・寄生虫病学では名前の通り寄生虫および寄生虫は引き起こす病気について学びます。

寄生虫といっても扱うのは吸虫、条虫、線虫です。聞きなじみが薄いと思うので有名どころを軽く紹介すると、日本住血吸虫や日本海裂頭条虫(サナダムシとも)、エキノコックスやフィラリアなどです。

特に北海道はエキノコックスの問題が深刻なので授業で1回まるまるエキノコックスの回がありました。北大構内にもキツネの親子が住んでいますが毎年獣医学部の先生がエキノコックスの検査をしているそうです。

寄生虫の形態や生活環には寄生虫それぞれ個性があります。寄生虫が最終的に寄生する動物(終宿主)や終宿主に至るまでに経由する宿主(中間宿主や待機宿主)は寄生虫ごとにバラエティがあるので見る分には面白いですが覚えるのはなかなか厄介です。

余談にはなりますが、寄生虫学を勉強してからは肉(特に豚肉🐷)をより注意して料理するようになりました。

機能制御薬理学

薬理学は2年生の後期で基礎薬理学として交感神経や副交感神経に作用する薬などを導入として習いましたが、機能制御薬理学では「中枢神経系に作用する薬」、「心臓に作用する薬」、「呼吸器系に作用する薬」、「腎臓に作用する薬」とかなり細かく習います。

登場する薬の数も膨大です。薬理学を覚える上で重要なのは受容体で、受容体がどの臓器に発現してどのような働きを示すのかを追えると心臓や中枢神経の薬の話が理解しやすかったです。

機能制御薬理学を理解するには2年生の生理学や基礎薬理学がしっかりと頭に入っている必要があると感じました。

感染症学Ⅰ・Ⅱ

いかにも獣医学部らしい授業名ですね。

感染症学はⅠとⅡに分かれていてⅠは家畜(ウシなどの反芻動物、ウマ、ブタ)の疾病を扱い、Ⅱは小動物(イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、ミンク)とミツバチについて習います。

2年生および3年生で習った微生物学ⅠおよびⅡでは疾病を引き起こす原因であるウイルスや細菌、真菌について覚えましたが感染症学は疾病を中心にその原因微生物学や症状、発症メカニズム、流行地域、ワクチンの有無などについて学びます。

感染症Ⅱでフェレットやウサギ、ミンクといったエキゾチックアニマルの疾病も少し扱いました。例えば同じウイルス(犬パルボウイルス)でもイヌとフェレットで致死率が全く異なることなど、イヌネコをそのまま当てはめれば良いものではないことが興味深かったです。

またミツバチの疾病についても学ぶことは意外に思われる方もいらっしゃるかもしれません。養蜂業も動物が関わる重要な農業なのでミツバチの健康を守ることも獣医師の仕事の1つになっています。

病理学総論

病理学では病気が起きるしくみについて扱います。3年生の前期で総論を習い、後期に各論が続きます。

総論では様々な言葉の定義を習います。なんとなく使っていた「腫瘍」や「肉芽腫」、「水腫」、「虚血」「ショック」などには学問的に正しい定義がありこれらをしっかりと覚えます。

生理学や免疫学で学んだトピックも病理学の側面から見るとより細かく知ることができました。

原虫病学

原虫病学は寄生虫・寄生虫病学と同じ寄生虫学教室の先生方の授業です。

原虫病学では赤痢アメーバやトリパノソーマ、住肉胞子虫、トキソプラズマ、マラリアなどの原虫の他にベクターとして重要なダニや蚊、シラミなどの節足動物についても習います。

最近ではマダニが媒介するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)による犠牲者が出るなど動物だけでなく人にとってもダニは重要な問題です。

またトキソプラズマは妊娠中の方が初感染を起こすと胎児に重篤な影響が出ることから、終宿主であるネコに注意するよう呼びかけが行われているのをご存知の方もいると思います。

小学校や中学校で昆虫の体のつくりは学習したと思いますが、ダニの構造については習ってこなかったので色々なダニがいることに驚きました。

基礎動物衛生学

基礎動物衛生学では感染症学や微生物学で学習したことをより衛生学的な側面からフォーカスします。

例えば2010年に宮崎で発生した口蹄疫を引き合いに、何故この防疫措置が取られたのか、適切な消毒方法は何かという風に学びます。

コロナのパンデミックを経て消毒や滅菌がより一層意識されつつありますが、消毒液の適切な使用方法および使い分けについては現場で非常に重要なことを知りました。消毒=アルコールのイメージを捨てないといけませんね。

家畜育種学

家畜育種学の「育種」は聞きなじみのない言葉かもしれません。

ざっくり説明すると良い品質の家畜を生み出すためにベストな交配を考える学問だと思います。

高校で習ったメンデルの法則やハーディ・ワインベルグの法則をベースに考えますが、これに統計学(正規分布の考え方)も加わります。

表現型を考える際に遺伝子だけでなく環境の影響も考慮する点(高校ではそう習わなかったと思います)は興味深かったです。また父親と母親をかけ合わせる際に生まれる子供の表現型価が必ずしも両親の平均値ではないことも大学受験の生物では考えてこなかったことなので目から鱗でした。

実習

薬理学実習

薬理学実習では講義で習った薬の一部を実際に使用し、教科書で言われているような薬効が出るかを実験します。シミュレーションを使って実験することもあります。

教科書に書いてあるとはいえ我々学生が実験すると綺麗にデータが出ないことが多いです。投薬や注射といった手技面だけを原因と決めつけずに得られたデータに忠実になぜこのような結果になったのか考察を立てる練習もします。

ある実験で薬の動態が予想していた通りにならなかったことがありました。当初は薬が意図しないからだの部位に到達したのではと考えていましたが、担当の先生が講評で「もう少し実験を長めにやっていれば予想に近い動態を示したかも」とコメントされており、我々が教科書に書いてある模式図に捕らわれていたことに気が付いた、ということもございました。

微生物学実習

微生物学実習は前半は細菌を後半はウイルスを扱います。

細菌学実習では細菌の適切な扱い方や培養のやり方、同定実験などを行います。

丸い寒天に棒(コンラージ棒と言います)をぬりぬりする作業をご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。同定試験では細菌名を伏せられた状態で細菌が配られ、様々な試験をして細菌名を当てます。漫画『動物のお医者さん』(佐々木倫子先生)にも描かれていますがまさしくシャーロックホームズのワトソン君になって実験が終わった後、ああでもないこうでもないと言いながら答えに漕ぎつけました。

後半のウイルス学実習では培養細胞にウイルスを感染させて細胞の変化を観察したり、ウイルスに対する抗体価の測定を行います。

授業を受け持っていらっしゃる先生方のお話もタイムリーな話題が多く(道東の海生哺乳類と鳥インフルエンザの話など)面白かったです。

放射線演習

北大の獣医学部には放射線を扱う専用の建物があり(管理区域なので普段は入れません)、実習ではその施設に入って実験を行います。なお実習に参加しても人体に影響はありません。

実習では放射線を測定するサーベイメータの正しい使い方や放射線同位体(アイソトープ)の測定方法放射線を照射した組織標本と正常な組織標本の観察などを行います。

緊張感がありますが、獣医学部に入らない限り触れられないことなので放射線に関する正しい知識を身につける貴重な機会でした。

実験動物学実習

実験動物学実習ではまず実験動物の適切なハンドリング(持ち方)や注射、投与などの手技練習を行います。練習にあたっては模型のラットやマウスを使うこともあります。

基本的な手技に慣れてきたら応用として手術の練習やサンプルを摂取して遺伝子型を解析する実習もあります。

またバイオインフォマティクスとしてデータの適切な処理方法(どのサイトやソフトを使うべきか)についてのレクチャーや論文を班ごとに紹介してディスカッションをする回もあります。

動物衛生学実習

動物衛生実習では北大の農場にある家畜施設の見学や畜舎消毒の実践を行います。

北大の農場はいつも横を通っているとはいえ3年生になるまで入ったことがありませんでした。放牧地を歩くと草の中に牛の糞がたくさんあって、説明してくださった方によると北大の農場は化学肥料に頼らずに牧草地を維持しているそうです。

畜舎消毒では実際に家畜保健衛生所(通称家保)から獣医師の方をお招きして消毒方法を教えていただきました。7月の下旬に行ったのですが防護服にマスクで冷房のない畜舎を消毒するのはかなり重労働でした。

大変でしたが感染症学や基礎動物衛生学で学んだことを現場で見ることができ貴重な経験でした。

現地実習

北大の獣医学部には通常授業とは別に現地実習があります。これは各自で実習先にアポイントメントを取って実習に行き単位を認定してもらうものです。

実際に獣医師の方に指導を仰ぎ現場を見学させてもらえる貴重な機会です。

実習先は家畜保健衛生所やNOSAI、動物病院、動物園、水族館など様々です。

北海道内で実習する人もいれば全国各地に赴く人もいます。本業は実習ですが、実習後に実習先の都道府県を観光するなどささやかな楽しみもあります。

3年前期を終えて

3年生前期の授業を終えて2年生の時よりも感染症学や寄生虫学、衛生学など現場につながる勉強が増えた印象を受けました。

とはいえこれらの授業が2年生で学習したことをベースに成り立っていることもひしひしと実感(痛感)しました。

まとめ

今回は北大獣医学部の3年生前期の授業についてご紹介しました。

ここには書き切れなかったことも沢山ありますが、試験や実習で苦労しながらも充実した日々を送れます。

北大は先生方のご経験やキャンパスの広さから実習に関して非常に恵まれています

ぜひ北大でお会いできるのを楽しみにしております。

この記事を書いた人

渡邉先生