こんにちは、ベレクトNEXTです。
公衆衛生学は、人間集団を対象として、疾病の予防、健康の保持および促進を目的とする学問です。
大きく分けて、統計学、食品衛生学、人獣共通感染症学、環境衛生学の4つに分類されます。
どの分野も微生物学、伝染病学など他分野と密接に関わっており、横断的な勉強が求められます。
他の分野が苦手で知識が抜け落ちている方は他分野の振り返りや、自信がある方も知識の補充を緻密に行いましょう。
このページでは、獣医師国試「公衆衛生学」の勉強方法と大事なことを解説しています!
ぜひ参考にしてみてください。
公衆衛生学の勉強方法
- 用語の定義を正確に覚える。
- 微生物、伝染病の知識に食中毒や人獣共通感染症の知識を追加する。
- 分からないことがあったら、獣医公衆衛生学(文永堂出版)で確認する。
基本的なインプットは、日獣まとめや北大まとめを使用することをおすすめします。
しかし、実際に国試の過去問を解いていて分からないことがあった時などは、教科書の該当箇所を読むと詳細に書いてあるため、理解を深めることができます。
公衆衛生学の勉強で大事なこと
統計学
用語の定義を正確に覚える
統計学は用語の定義を聞かれる問題がほとんどです。
まとめ資料などを使ってよくでる統計学用語は短く正確に覚えましょう。
(ex:統計指標、標本抽出の方法、疫学研究方法など)
計算問題も大切に
統計学は計算問題もいくつかでることがあります。
罹患率、有病率、オッズ比、相対危険度、寄与危険度、感度、特異度などがあります。
計算方法をインプットした上で、国試の過去問を自分の手で計算しながら演習しましょう。
食品衛生学
食中毒の原因となる飲食物は?
食中毒の原因微生物と原因となる飲食物をしっかり覚える。
食中毒の発生時期や患者数、発病率の高順位も意識してリンクさせておきましょう。
自然毒
動物性自然毒、植物性自然毒は毒性物質と症状を覚えておくことが大切です。
また、写真が出てくることもあるのでカラーアトラスなどで確認しておきましょう。
食品衛生に関する法律、制度
食品衛生法、と畜場法、食鳥検査法、HACCPなどよく出るものに関しては、その法律の対象動物などポイントを抑えて暗記をしましょう。
人獣共通感染症学
感染症の分布
写真問題で発生地図(日本や世界の地域)が出てくることがよくあります。
まとめに載っていないものでも、厚労省や農水省のHPなどで分布地域を確認しておくことをおすすめします。
日本での発生は?
日本での発生は問題で問われることが多く、前述の地図問題でも大きなヒントになります。
過去流行したものに関しては、年代まで覚えておくと、完璧だとおもいます。
また、日本でのワクチン使用や感染症に対してワクチンがあるのかないのかまで把握しておきましょう。
媒介動物は?
媒介動物は、伝染病でも問われる部分だと思いますが、人獣共通感染症でもよく聞かれるので、しっかり確認しておきましょう。
媒介する昆虫や動物の写真も、最近では頻繁に出題されています。
媒介動物を単語だけで抑えるだけではなく、実際に写真などを教科書やネット上で把握することもした方がいいです。
環境衛生学
環境衛生学は水環境、大気環境、地球問題など分野が広く深入りは危険な分野です。
ポイントを抑えて勉強しましょう。
基準を覚えよう
水道水質基準、土壌汚染、水質汚濁に関わる環境基準など、特に検出されてはいけない項目を覚えることが大切です。
また、昨年(~本年)までの環境に関するニュースを確認しておくことで、問題視されている環境問題について把握できます。
例えば、PFAS(有機フッ素化合物)は、最近よく注目・課題になっている物質です。
下水処理
活性汚泥法が頻出なので、処理の流れ(図や写真で出題されても分かるように)、メリット、デメリットをしっかり覚えましょう。
公害
起こった場所、原因物質、症状を覚えましょう。
第77回試験の公衆衛生学について
今年の試験ではどうだったか(傾向や難易度など)
難易度に関しては、例年通りだったと考えております。
一方で、上記でも記述しましたが、概念の丸暗記では解けない問題はあったように感じました。
例えば、D問題で、統計問題が2題でており、帰無仮説や有意差などの問題がありました。
意味まで理解しておくことの重要性を再度認識しておきましょう。
来年の予想、対策ポイントなど
近年、食品衛生の中でも、食品表示や食品添加物に関する法律の問題が増えている傾向にあるので、重点的に対策を行ってよいと思います。
食中毒と人獣共通感染症に関しては、最低毎年2題以上出題されるので微生物や伝染病と合わせて漏れなく覚えておいてください。
実際に出た問題を一問解いてみよう!
第77回B問題
1.抗毒素血清による治療が一般的である。
2.典型的な症状は嘔吐である。
3.我が国で2000 年以降の発生はない。
4.Shigella dysenteriae は他の病原菌よりも病原性が低い。
5.サルで本疾患を診断した獣医師は直ちに保健所に届け出る義務がある。
解答:5
解説:
① 抗毒素血清による治療が一般的である。
細菌性赤痢は、主に 赤痢菌(Shigellosis を起こす Shigella 属) の感染による腸管感染症。
治療の基本は、輸液(脱水補正)・抗菌薬(ニューキノロン系、セフェム系など)である。
② 典型的な症状は嘔吐である。
細菌性赤痢の典型症状は発熱・腹痛・しぶり腹・粘血便・膿血便・下痢です。
嘔吐が起こることはありますが、典型症状とはいえません。
③ 我が国で2000年以降の発生はない。
日本では衛生環境改善により大きく減少しましたが、海外渡航者からの輸入感染・集団発生は現在でも報告されています。
④ Shigella dysenteriae は他の病原菌よりも病原性が低い。
Shigella dysenteriae は 最も病原性が高い赤痢菌 とされています。
志賀毒素(Shiga toxin) を産生し、重篤な腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすことがある。
⑤ サルで本疾患を診断した獣医師は直ちに保健所に届け出る義務がある。
赤痢菌は 人獣共通感染症であり、特に霊長類(サル)では感染が問題になります。
日本では 感染症法 に基づき、サルで赤痢菌感染を診断した獣医師には 届出義務 があります。
感染症法上の3類感染症に分類される。
今年の国試対策で押さえておきたい「新出題基準」まとめ
追加
- 特殊法人国立健康危機管理研究機構」が追加され、内閣府の管轄として「消費者庁等」が追加
- 「新型インフルエンザ等対策特別措置法」「食品表示法」「農薬取締法」の3つが追加
- 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法
- 特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律
- 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律
- 土壌汚染対策法
- ダイオキシン類対策特別措置法
- 騒音規制法
- 振動規制法
- 生物多様性基本法
- 循環型社会形成推進基本法
- 資源有効利用促進法
- 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
- 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律
- 地球温暖化対策の推進に関する法律
- 特定物質等の規制等によるオゾン層保護に関する法律(※出題基準上は「~保護に」と記載)
- フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律
- 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
- 新たに大項目「臨床疫学」が新設され、「予後の評価」「診断」「根拠」が追加
- 疫学の方法論に中項目「因果関係」が新設され、「発生要因とリスク因子」「因果関係の判定」が明記
- リスクアナリシスのステップに「ハザード特定」が追加
- 疾病及び対策の経済的評価の手法に「粗利益分析」が追加
- 人と動物の共生の取り組みとして「適正飼養」「普及啓発」「動物福祉」が明記
- 疫学指標の名称が「罹患率」→「発生率〈罹患率〉」、「発生率及び感染率」→「発病率」へ正確な表現に変更
- 生体反応による有害性の項目に「腸内細菌叢との相互作用による食品の有害性」が追加
- 細菌による食中毒に「エシェリキア・アルバーティ」「ブルセラ」が追加
- ウイルスによる食中毒に「サポウイルス」が追加
- 食品から検出される発がん物質として「アクリルアミド」が追加
- 食品別衛生管理の項目に「GHP」の概念が追加され、対象として「魚介類の衛生」「野菜・果物の衛生」が新設
- 感染症法規定のウイルス性感染症に「中東呼吸器症候群〈MERS〉」「新型インフルエンザ等感染症(新型コロナウイルス感染症〈COVID-19〉を含む)」「ジカウイルス感染症」「重症熱性血小板減少症候群〈SFTS〉」「チクングニア熱」が追加
- その他のウイルス性感染症に「牛痘」「偽牛痘」「ボルナウイルス感染症」「ナイロビ羊病」「ウェッセルスブロン病」「豚インフルエンザ」「レオウイルス感染症」「ロタウイルス感染症」「オルフウイルス感染症」が大量追加
- その他の細菌性感染症に「カプノサイトファーガ感染症」「ガス壊疽」「ボツリヌス症」「ブドウ球菌症」「ストレプトコッカス・スイス感染症」「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」が追加
- その他の真菌性感染症に「ブラストミセス症」「アスペルギルス症」が追加
- その他の蠕虫性感染症に「アジア条虫症」が追加
- 気象の指標に「WBGT指数」が追加
- 浄水処理の手法に「膜ろ過」が追加
- 室内環境問題として「シックハウス症候群」「ハウスダストによる呼吸器疾患及びアレルギー」が追加
- 地球環境問題・国際条約の項目に「水俣条約」「カーボンニュートラル」「地球温暖化対策の推進に関する法律」「パリ協定」「生物多様性基本法」「名古屋議定書」「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」「マイクロプラスチック」が新たに追加
- 国際機関の名称が「OIE」から「WOAH」へアップデート
- 大項目「大気環境の衛生」が「生活環境(空気)」に、「水環境の衛生」が「生活環境(水)」へと名称整理
- 「食中毒」という大項目名称が、より実態に合わせた「食中毒及び喫食により起こり得る健康障害」に変更
変更
- 獣医師の職域
- 名称が「行政獣医師・公衆衛生獣医師」から「公務員獣医師〈農林畜産・公衆衛生・動物愛護〉」へと変更
- 行政機関(公衆衛生組織)
- 厚生労働省の管轄内表記が「国立研究所」から「国立医薬品食品衛生研究所」へと変更
まとめ
公衆衛生学は、微生物学や伝染病学と密接につながっており、公衆衛生学だけ勉強しても回答できない問題も多々あります。
微生物や伝染病の知識も振り返りつつ、勉強することをおすすめします。
国試の過去問を解くときは、正答の選択肢以外の説明もできるようにすると勉強になると思います。
この記事は、獣医師のとね先生が執筆しました。




